『最近NISAのCMをよく聞きます。NISAのメリットとデメリットってなんだろう』こういったCMでNISAについて興味をもたれた方は多いと思います。NISAは仕組みが複雑で自分にメリットがあるか、デメリットが多いかわからない、本当にCMの様に「みんなにいいさ」なのでしょうか?
NISAの『税の回避地』1つのメリットと4つのデメリット
NISAのメリットとデメリットを理解する前に、NISAとは何かを簡単に解説します。NISAとは、証券会社や銀行の税金がかかる一般口座の中に、配当金をもらっても、取引利益が出ても、損が出ても税務署が関知しない『税の回避地』(海外に作るタックスヘイブンのようなイメージ)を作ること(※作れるのは金融機関1社のみ、NISA金融機関選びは手数料が安く、商品が多いメリットがある金融機関を吟味しましょう。)です。この『税の回避地』にはルールが3つあり、
①年間120万円の1度だけ使える回避枠が与えられ、その金額範囲までしか回避地に入れる事ができない。
②期限があり、最長で5年間までしか入れることが出来ない。(期限が切れた場合は自動的に一般口座に移動するデメリットが、もしくは新たに与えられる回避枠に入れる手続きをして延長する。)
③ 翌年になると、また120万円の回避枠が与えられる。(ルール㈪と合わせ、最大600万円まで買い増せる)
このNISAは税の回避地であることと3つのルールを理解すると、メリットだけでなくデメリットも見えてきます。
NISAの唯一のメリットは配当金、譲渡益に対し税金がかからない
『税の回避地』であるNISAの最大にして、唯一のメリットは、譲渡益、配当金が一切かからないことです。言葉で書くと短いですが、これは非常に大きなメリットです。例えば、配当利回りが1.5%の株を120万円分NISA口座で購入した場合、
NISA口座 配当金1.8万円 受取金1.8万円 税金0円
一般口座 配当金1.8万円 受取金 1.44万円 税金 0.36万円
となります。更に株が上がった場合、転売した譲渡益も無課税になりメリットが発生します。翌年以降には新たな回避枠が与えられますので、1年毎に更なる節税効果を得ることができ、その際のメリットはどんどん大きくなるでしょう。同様の株で5年間600万円分まで買い増しをしたら、毎年1.8万円の税金が免除されるメリットが発生します。
NISAの実損デメリット①損益通算が出来ない
NISAはメリットだけでなく、その陰となるデメリットが存在します。NISAは『税の回避地』です。回避地での損失についても税務署は関知しない事に気を付けなければなりません。つまり、NISA口座で60万円の譲渡損失を出し、一般(特定)口座で40万円の譲渡益を出した場合、通常当たり前のように出来る損益通算が出来ず、一般口座の40万円の益だけに税金が約2割(約8万円)かかります。これはかなり大きなデメリットと言えるでしょう。特に、短期売買をしようと思っている方にとってはデメリット以外の何物でもありません。1円も益が出てない所か、トータルで損失がでているのに更に税金をとられるなんて泣きっ面に蜂ですね。
NISAの実損デメリット②損益繰越が出来ない
NISAは『税の回避地』ですので、節税策全般適用されないデメリットもあります。一般口座での売買は損失が出たときに、その損失を3年間繰り越せますが、NISAでは当然繰り越せない、これもNISAの大きな実損デメリットになります。
NISAの実損デメリット③5年後に手続しないと大損
NISA制度は2014年1月から第一回目の回避枠が開始されましたが、それが切れる2019年に注意してないと思わぬデメリットが発生します。というのも、2014年に買ったNISA枠が2019年に5年間の期限が切れると、NISA口座から一般口座に移され、取得価格が一般口座に移った時に書き換えられる為です。例をあげると、120万円で買った株が5年後60万円になり、一般口座に移る、その後何とか100万円に戻ったので売ると取得価格が60万円に切り替えられている為、40万円の譲渡益として課税がかかります。制度が複雑のため、その時の相場環境で阿鼻叫喚の図になるかもしれません。
NISAの精神的デメリット④損ギリが遅れ投資スタイルが崩れる
NISAは実損だけでなく、精神的なデメリットも多く発生します。例えば、120万円で初めてのNISAで投資をし、その株が100万円を切ってしまった、皆さんは20万円の損失ですっぱり諦めて切れるでしょうか。枠を使い切って勿体ないので、殆どの方が利益が出るまでホールドしようと考えるでしょう。それがNISAの最大のデメリットで、本来であれば投資に最も必要な損ギリの決断を麻痺させてしまい、結果株価が半分、3分の1、10分の1になってしまう可能性があります。投資スタイルの崩れはメリットを吹き飛ばす位のデメリットです。税金を納めなくていいメリットはあっても、損をしては何も意味がありません。
いかがでしたでしょうか。NISAは株価が上がった時はメリットだけで天国だけど、下がった時はデメリットだらけで地獄になります。NISAは決して「みんなにいいさ」ではありませんし、メリットの陰でデメリットが多く発生します。人や投資する株によってメリットにもなるし、デメリットにもなるのです。NISAのメリットが最大活用したい場合は、㈰NISA用の投資に資金を分ける㈪老後の資産形成の為の長期投資と割り切る㈫銘柄は株価変動が少ない安定株で配当利回りが多い株(ディフェンシブ株やETF)の企業を枠の設定分まで買い増すというのがメリットを最大化するでしょう。NISAをうまく活用してメリットの享受をうけてください。
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